ザスパクサツ群馬 アシストパートナー就任記念特別企画
ザスパと私 第3話 (全3話)
『恋のジャイアントキリング』
私は事業会社の海外事業部を経て、ベンチャー企業の経営管理部門で働いていました。
そして、ザスパ草津は、ザスパクサツ群馬にクラブ名を変えていました。
当時、私には、思いを寄せる女性(以下「K子」さん、としましょう)がいました。
デートに誘ってみるも、いつもつれない返事。
K子さんは浦和レッズのファンでした。
サッカーの試合に誘ってみようにも、ザスパはJ2なので、J1のレッズとリーグ戦で対戦することはありません。
しかし、その年の天皇杯(リーグ戦とは別の、アマチュアも含めたトーナメント戦)で奇跡が起きました。
なんと、ザスパとレッズが3回戦で対戦することになったのです。
私「こんな機会は一生に二度とないよ!一緒に試合を見に行こう!」
K子「その日は予定があるから行けない。」
私「じゃあ、もし、ザスパが勝ったら、一緒にディズニーランドに行こう!」
K子「え?」
私「ザスパがレッズに勝つなんて、確率的にほぼゼロ。でも、それでもザスパが勝ったら、、、それは運命なんだよ!」
、、、ということで、私は、会社の同僚と二人で観戦に向かいました。
試合会場はレッズのいつものホームグラウンド、埼玉スタジアムではなく、おんぼろの浦和駒場スタジアムでした。
また、レッズの先発メンバーも確か9選手がターンオーバー(リーグ戦に備えて、レギュラーを休ませて控えを起用すること)でした。
レッズは完全にザスパを舐めていました。
とはいえ、駒場スタジアムの95%は赤のレッズファンで、青のザスパファンは5%くらいでした。
ザスパ側の指定席を予約していましたが、一番最前列の席で目の前がザスパのベンチでした。
ディズニーランドを賭けた闘いの火蓋が切られました。
もし、ザスパが勝つとすれば、守りに守って、0-0のままPK戦に持ち込むくらいしかないだろう、試合前はそう思っていました。
しかし、その目論見はもろくも打ち砕かれました。
前半終了間際、PKで先制ゴールを決めたのはレッズでした。
ハーフタイム、目の前のベンチでインタビューを受けていた秋葉監督に、私は思わず声を上げました。
「あきばあ(秋葉監督)!あきらめるな!まだ、イケる!」
こっちはディズニーランドがかかっているのです。諦められては困る。
目の前の秋葉監督にも、BSサッカー中継の視聴者にも、私の声は届いていたに違いありません。
声を上げてはみたものの、正直、試合はもう諦めムードでした。
ザスパがレッズから得点を取ることは難しいだろう。
レッズから簡単に得点できるくらいなら、J2下位に低迷していません。
そんな現実は悲しいくらい理解できます。
しかし、奇跡は起きます。
後半25分、なんと同点ゴール。
「よっしゃー、そのまま、同点でPK戦に持ち込めえ!」
そう叫んだのも束の間、なんと、ラフィーニャが2点目のゴール!逆転!
「えーーーー!うそーーーーーーー!!」
ザスパサポーターの方がびっくり。
私も最前列の席で、なんとか、そのままタイムアップに持ち込むべく、暴れ回っていました。
試合もそのまま、ザスパの勝利。
「ハーフタイムに声援を送ったから、ザスパに気合が入ったんやー!!」
本当の勝因は、W杯で優勝したドイツのキーパー ノイヤーにかぶれたレッズのキーパー西川選手が、やたら前に出てくる攻撃的なセービングをいい加減に真似して隙だらけだったことでした。
「ジャイアントキリング達成!あきばあ!よくやった!ディズニーランド!!!」
試合後は95%のレッズファンはお通夜のような静けさ。
ザスパの青いTシャツを着たまま駅まで帰ると、レッズファンに襲われそうな身の危険を感じました。
ザスパは、普段はなかなか勝てないくせに、こういう大一番で気まぐれにジャイアントキリングをかますのです。
リーグ戦でも、下位に取りこぼすくせに、昇格争いをしている上位を気まぐれに倒して、昇格争いを混乱させる。
ジャイアントキリング、それがザスパの生きる道!そして、私自身の生きる道!
いつもいつも、「強いものが勝ち、弱いものが負ける」では、面白くないじゃないですか!
私「K子ちゃん!ザスパが勝ったよ!約束通り、一緒にディズニーランドに行こう!」
K子「私、そんな約束した覚え、ありません。」
私「。。。」
恋の試合の方は、今日も5-0で大惨敗でしたとさ。
その年、私は独立開業を決意した。